「今の日本国憲法はアメリカの押し付けだから変更しなければならない」という人たちがいます。
確かに太平洋戦争に負け、米軍占領下でつくられた日本国憲法が日本側の自由意志であったとは考えにくい。実際はどのような経過でつくられたのか。
作者はあとがきで「出来るだけ事実に沿うことに務めた」と書いていますが、あくまで小説です。作中で、白洲次郎の妻正子が「見たわけでもないやつが、何をぬかすか!」と夫にビンタをくらわすエピソードが書かれていますが、この本とて同じと心得るべきでしょう。
大切なのは、実際に何がどうなったのか。そして、その評価です。
誰がどう関わったにせよ、未曾有の惨劇を引き起こした反省から出来上がった憲法であり、修正することが出来ても、いまだにそれを修正していない事実から、決して悪いものではなかったというのが今の評価だと言えます。
その後のアジア情勢ではこの憲法のおかげで朝鮮戦争やベトナム戦争に巻き込まれず、軍需景気だけを得ることで高度経済成長を実現したこともまた事実ですし。
最後に作者は主人公に「借りものの国旗で、借りものの憲法を祝うなんてまっぴらだ。」と言わせていますが、「負けるが勝ち」だったんじゃないですかねと思ったりします。