人が死ぬのはいつか。しばしば問われるテーマです。
作品中で直接的に語られているわけではないのですが、読後に改めて感じました。
肉体が滅んでしまえば消えてしまうけれど、覚えてる人がいれば、その人の記憶の中で生きている。親しい人なら、記憶の中の自分に問いかけてくれることがあるかもしれない。
この作品は、大手企業を辞めて大して知識が有るわけではない映画を学ぶ大学院生となった語り手が教授の紹介で引退した大女優の荷物整理を手伝い、交流していくお話です。
大女優として親友の人生を生きてきた気がするというのは、常に心の中の彼女と会話してきたという事もあるのでしょうか。
芸能人であれば、引退した時点で芸能人としての自分は死んだと感じるかもしれません。
そうであるとすると、死後の自分を見て生きる人生とはどういうものでしょう。
被爆を通して戦争の残酷さを訴えるのは明らかに作者の訴えたいテーマの一つでしょう。
タイトルの”ミス。サンシャイン”は、大女優を賛美する言葉のように感じられますが、実際には被爆者である彼女への差別でもあり、言われた彼女が嫌っていた言葉。
そして、そういった人々に今の地位を与えられていると同時に、何の罪のない親友の命を奪ったように多くの市民の命を奪ったことに対する無反省な態度は、彼女の心に影を落としていたのでしょう。
掘り下げて行けば深いテーマをさらりと重くない語り口で書かれた作品だと思います。

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