この本には2篇の作品が収録されています。
一篇は「十二月の都大路上下(かけ)る」、もう一篇が「八月の御所グラウンド」。
「十二月~」は高校女子駅伝、「八月の~」は著者お馴染みの京大腐学生を主人公とした早朝草野球のお話。
大雑把に言えば、二篇とも京都の死者と生者が交わるお話ですが。その筋で語れば表題作である「八月の御所グラウンド」がより深く感じるものがあるでしょう。
さて「八月の御所グラウンド」。わたしも草野球のチームに参加していたことがあって、しかもそのチームはこのお話に出てくるような人数をそろえるにも苦労するチームでした。チームメイトの知り合いのホストにヘルプを頼んだこともあるし、人数がいよいよ足りないときはマネージャーの女の子を入れたこともあります。結果はこの物語のようにいくわけがありません。なぜやってていたのかと言えば長年続いているチームに対する義務感と人のつながりでした。個人的には野球愛というより義務感やいろんな人とのつながり。そういったものが大切だったりします。
ここで描かれる野球チームも就職が決まったのに卒業が危うい友人の卒業のため試合のメンバーに駆り出された語り手の経験するファンタジー。「フィールドオブドリームス」という映画がありますが少し通じるものがありますが。
ただ、問題はそこではなく、単位と引き換えにグーたらな学生にそのリーグ戦の優勝を条件にする教授の思いなのかなと感じます。
夏休み真っ最中の八月の早朝に大学生を主力とした野球チームを即席で編成するのは至難の業ですが、他のチームが人数集めに手を打ってくる中、教授が何の手も打たず続けている理由がこの物語の主題でしょう。
そこから何を感じるか。それを感じられるかどうかで物語の味わいは変わります。
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