2023年11月8日水曜日

【鵼の碑】(※鵼は空偏に鳥)京極夏彦 講談社ノベルズ 2023年9月14日第一刷発行


 “姑獲鳥の夏”から始まるシリーズの最新刊で、前作“邪魅の雫”の発表が2009年9月(短篇ですから14年ぶりという認識ですが、その間も関連した作品は発表されているのでファンの方にはそれほどのブランクは感じないのかもしれません。

シリーズ30年という事で、“姑獲鳥の夏”の発表からそんなに経つのかと感じましたが、物語の舞台が戦後日本で、社会から失われたり溶け込んで分からなくなる言葉や習俗が一つのテーマになっているため時間は関係ないのだなと思いました。

複数の出来事や謎。それが一つに収束する。ミステリーとそれには直接関わらないけれどその背景を構築するものを語る部分がこれでもかと描かれため、ノベルズ版で2段組み829ページの長編となっていますが、それはこのシリーズではおなじみで、一回ミステリー部分以外を読み飛ばして気に入ったら全体を読み直すという読み方もありだと思います。

求婚者が行方をくらまして、それをを捜す女性。父を殺したという告白を聞いてしまった劇作家。戦前に起きた消えた3体の死体をの謎を追う刑事。一人孤独に亡くなった大叔父の医師の生涯に思いを馳せる姪。そして日光の寺院で見つかった古文書の調査に出向いている京極堂。その周辺の人物が絡み合った出来事の先にどのような結末が待っているのか。

30年前の姑獲鳥の夏の事件で京極堂が関口に言った「この世には不思議なことなど何もないのだよ。」という言葉がやはりここにも。

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