情報が多く、読み終えて、大きな息をついた感じです。
ジャンル分けをすればミステリーという事になるのでしょうが、読み方としてそれでいいのかは分かりません。
第二次世界大戦敗戦直後ベルリンの現在進行形の物語と過去の物語(幕間)が交互に描かれていて、その物語の背景がくっきりと浮き上がるような語り方。
アーリア人でありながらナチズムを受け入れなかった家族の少女の視線で描かれ、相棒として登場する元俳優の男。結末は、確かに謎解きなのですが、それよりもその社会の描写に圧倒されます。
例えば、ユダヤ人迫害に対するある婦人の「自分のユダヤ人への憎しみは誤解からだった」という告白は、その婦人のような具体的な憎しみの対象に対して騙される出来事がなく(それでも免罪されるものではないのですが)、雰囲気で迫害を実行した者が「騙されていた」という事の無責任さと危うさを感じさせます。
そして、そこには話に聞く日中戦争、太平洋戦争を戦った日本国民の姿が重なって見え、人の心は国が変わっても同じなのだなと改めて思いました。
今、現実に起きているロシアによるウクライナ侵攻は歴史を踏まえて対処しているようで、実際には同じことの繰り返しのような気がします。
多くの資料の裏打ちの下に創られたこの物語は、ドイツ語に訳されたらどのような読まれ方をするのだろうか…そこでは、むしろミステリーの部分は付け足しと捉えられるかもしれません。
0 件のコメント:
コメントを投稿