2022年4月7日木曜日

【ブラックボックス】砂川文次 作 講談社 2022年1月24日第1刷発行

 テンポの良い文章だけれど、途中からなんだか違和感がありました。普通、そんなわけないだろと。

最初の違和感は、自転車でメッセンジャー便をやっている主人公サクマがベンツとの衝突を避けるために取った行動を振り返って悪手だったと考えるところ。

左折する自動車を避けるのにブレーキを掴み左へハンドルを切って、バランスをとるために体を右に残すのは当たり前。それを「せめて変速機のついていない左側に体を傾けていれば」…傾けていたら体は自転車と道路にサンドイッチ。下手をしたら自転車は車道へ滑っていって後続車や対向車にぶつかってもっとひどく壊れた可能性もあるわけです。

それが体でわかっているから自然と出た反応をその場の感情に流される。

そんな、その場その場で思考停止することで起こる出来事が物語を転がしていきます。

一般的に「ああすればこうなる」という事があるわけですが、その「ああすれば」がわからなければ「こう」はならない。「思考停止」という事ではなく「考える手段を持たない」というのが正解で、それは多分、最近は発達障害と呼ばれている状態でしょう。

令和のプロレタリアート文学という評もあるようですが、病んだ心の物語と言った方がしっくりくる気がします。

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