最終とりまとめ案が全会一致で承認された直後に有識者委員5人で臨んだ記者会見。その席で著者が口にした「民主主義は大変ですね」という言葉が実感として感じられる2011年から3年にわたって行われた法制審議会の「新時代の刑事司法制度特別部会」のドキュメントです。
正義とは何かというのは、同じ社会システムで同じ方向を向いている人にとっては多分、ほぼ同じ答えになるのだと思いますが、その属する分野において実現する手法が異なり、許容するものも異なる…普通に生活していると意識することは少ないですが、そう感じる事は多々あるのではないでしょうか。
このドキュメントを読んで、刑事司法の裁判では得られた証拠がすべて開示されるわけではなく、検察が任意に開示し、どのような証拠があるのか他には開示されない。被告に有利な証拠があったとしても、開示請求がなければ開示されないし、そもそも知らなければ開示請求のしようがないという事を知って、そりゃ有罪率も上がるよな…と感じました。
そう言った点や取り調べの可視化、人質手法と言われる長時間拘束して弁護人を含め皆具との接触が制限される取り調べなどを巡る検察・警察と弁護士・有識者の意見の相違。はっきり意見を述べない裁判官、建設的な議論をしない法学者。
郵便不正問題で冤罪にされた村木さん当人が有識者に入っているにも拘らず従来の手法にこだわる検察・警察の委員は醜悪にも思えますが、それで社会秩序を守っているという彼らなりの正義の表れなのでしょうし、それが「民主主義は大変ですね」の言葉となるわけですね。
個人的には、この手の有識者の選ばれ方に興味があったのですが、周防さんは痴漢冤罪事件を取り上げた映画「それでもボクはやってない」の縁で日弁連から推薦されたのだそう。
常々「有識者」って何だ?と思っていたのですが、なるほどと。
事前に招集した側が落としどころを決めて「やりましたよ」的な事を言うための人選と感じる事もありますが、人選が適当に思えても、その中で、ちゃんと闘えるかどうか。自分の意見を通すだけでなく、最大限の妥協が出来るかどうか。
当然のことながら、真剣に取り組めば、とてもエネルギーが必要なのだなと感じました。
周防さん、お疲れさまでした。
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