2022年1月22日土曜日

【赤西蠣太】(原題「赤西蠣太の恋」)1917年9月発表 志賀直哉 作

  江戸時代前期に仙台藩で起こった伊達騒動と呼ばれる藩の権力争いの外伝的なお話。

 仙台藩は年若い藩主の後見人である伊達兵部と家臣の原田甲斐、伊達兵部の専横に異を唱える伊達安芸が争ったもの。

この作品が書かれた頃は、山本周五郎のベストセラー小説で、NHK大河ドラマにもなった「樅ノ木は残った」が書かれるかなり前ですから原田甲斐は悪人というのが通説であっただろうと思いますが、赤西蠣太がどちら側であろうとも読後感は変わらないように思いますし、個人的にはこの作品ではどちらが正しいとも描かれていないように感じます。この作品は赤西蠣太の恋の話なのですから当然ですが。

原題を念頭に読めば、密かに正義感が強く才気走ったところはないが善良で人に好かれる冴えない見た目の中年男で、ただ真面目にコツコツと仕事をする訛りのある新参の侍と家中で人目を引く町家の出の腰元との恋の顛末。表題を採って読めば思わぬ恋にうろたえながらも藩の領民のために冷静に判断をする侍の話。

岩波文庫で、ほんの26ページの作品です。伊丹万作監督、片岡千恵蔵主演で映画にもなった作品でコメディータッチに描かれていますが、戦前の作品にはありがちな完全には残っていないパターン。フィルムは切れやすくて、切れたら劇場で切り貼りしていたし、上映時間に合わせて勝手に切っちゃうとかあったらしいし、画質も音声も快適に鑑賞する形では残っていないもの。

映画、リメイクしないかなあ。

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