2021年9月21日火曜日

【コロナ狂想曲】海堂 尊 著 宝島社 2021年9月17日 第1刷発行

 第4回このミステリーがすごい大賞作品「チーム・バチスタの栄光」は、現役医師が書いた医療ミステリーということで話題になりテレビドラマや映画にもなりました。

その舞台で起こる(起こった)いろいろな事件の物語を桜宮サーガと呼ぶのですが、その最新作という事になるのでしょうか。

日本で現実に起こった出来事を作者の目からそのまま変名で語り、桜宮サーガの登場人物や設定を引き継いで、また新たな登場人物もプラスして一つの作品に仕上げる。作者がその手法を採ったのは医療を軽んじる社会に対する怒りと“事実は小説より奇なり”を今の政治が地で行っているので…という気もします。小説という容を採ることで今の日本社会に対する批判と希望を表明するという感じでしょうか。

表現が浮いていたり、物語の構成がぶつ切りな感じがしたり、描写が唐突だったりで正直、小説として読ませるには辛いのではないか。作品な中に出てくる怪しげなベストセラー作家 終田千粒(ついだせんりゅう)氏の作品は地方紙の記者である編集者 別宮の手が入らなければこんな感じなのかもと思いました。

そもそも、この作品は過去の作品群を読んでいないと分からない…内容が難解なのではなく登場人物のキャラクターの来歴や説明が過去作品に丸投げ状態。「チーム・バチスタの栄光」は2006年、映画化は2008年でしたから、そこからある程度読んでいないとついていけないのでは読者は限られそうですし、出来からしてこれを読んで前作も…とはならないと思います。自分自身、全ては読んでいないですし、前作「コロナ黙示録」は存在も知らず、読んだものを思い出しながら追いかけるという作業は骨が折れましたから。

変名で書かれている人たちの実名を思い浮かべて、ノンフィクションではないことに気を付けながら、こういう見方もあるなという、普通の小説とは違う読み方をする。

現実の世界のとても良く似たパラレルワールドの物語として読み、わたしたちは本来どうあるべきかを考えるという役割を持った作品なんだと思います。

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