ポーと言えば探偵小説の開祖、ゴシックホラーの名手、すぐれた詩人として知られますが、生前はその評価はヨーロッパにとどまり、アメリカでは評価されていなかったため、貧しい生活の中で妻を失い、本人も酒場で倒れ不可解な死を迎えたと言われます。
物語は死を控えた一人の男性の語りで進められます。男性は妻を殺した罪で死刑を待っていることが物語を読み進めるとわかってきます。
その男性の身に起こった事について、本人も理性的に解釈しようとしているのですが、無残な事を引き起こし、その後に起こった現象は説明できません。
この謎を解明する方向で進めば探偵小説の範疇になるのですが、物語では語り手には解明不能なホラーとなります。
焼け跡の壁に現れた殺された猫の姿の形、誤って撲殺してしまい壁に埋めた妻を捜索するために家に訪れた警察官の前で聞こえた妻を埋めた壁からの音…
罪の意識がものを見せるという事はありますし、隠そうという気持ちと同時に、見つけて罰してほしいという気持ちもまたあると思います。
そういう文脈から読めば、見えるものについてはアルコール中毒の影響で神経が不安定となった男の精神が見せるものという解釈は出来ますが、警官も聞き、壁を壊すきっかけとなった音は何か。その現象が単に不可解な事として読者に提示されたのでしょうか。
実際の話、死体が腐乱し内部にガスがたまって、それが何らかの原因で漏れ出て音がするという事はあり得るでしょう。
しかし、ポーが本当に解明できないと考えて探偵小説的な謎解きにせずにゴシックホラーとなったのはなぜだろう。現実に似たような現象があって、それを説明することが出来なかったからなのかもしれないな…と想像すると、それがどういう状況で何であったのか。それを見聞きしたら、とても印象強く恐ろしい出来事だっただろうなと思います。
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