2014年4月に河出書房新社から出版された単行本の文庫化。
翻訳文学部門で2020年全米図書賞を獲ったということで、増刷に次ぐ増刷だったんだろうか。27刷というのは近来目にすることがなかった。
娯楽小説ではないから再販制度のある日本では委託期間が終わった後でどっさり返本されたりしたら出版社の経営を直撃することになるし、注文品にしてもどれだけの注文があるのか難しいからまとめて刷ることが難しい。27刷で30万部というのはそういう事情がうかがわれる。
おそらく編集者も日本の貧困を描く作品がどれほど売れるものかという懐疑があっただろう。
物語の本筋とは別に興味深いのは、英語に翻訳されてアメリカで賞を獲ったことだ。
この日本人でも知らなければわからない習俗などをどう翻訳したのか。作品自体というよりは物語のスタイルと今日的な問題が評価されたのではという気もする。
だからと言って物語本来の価値が変わるものではないし、多くの人が読むきっかけになったのであればよいことだ。この国が築き上げてきたもの、その後ろにあったもの、貧困について。人の思いやりによる孤独について考えるきっかけになれば。
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