2021年1月31日日曜日

【名もなき庶民の慟哭 宝生流新春能楽鑑賞会】りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館 能楽堂 2021年1月30日

 昨年5月に公演予定だったのだけれど、新型コロナウイルス感染対策のためいったん中止となっていたもの。

演目は

舞囃子 養老

仕舞  田村 キリ

    柏崎 道行

狂言  地蔵舞

能   藤戸

 当日「柏崎」を舞う予定であった高橋章さんが急病のため地謡で入っていた宝生和英さんが代役を務めた。

 観客席は最前列を空け、席は一つ飛ばしでも観客席は寂しいという感じはなかった。

 「地蔵舞」では、感染予防という意味で笑ってよいものかどうかというくらい楽しめた。

 「藤戸」は藤戸の合戦の折、自らの手柄を立てるために漁師の息子を殺された老いた母親が、その手柄で領主に任ぜられ訴えごとがあれば申し出よと御触れを出した佐々木盛綱に恨みを訴え、男は回向を約束して家に帰す前段。殺害を後悔した男は殺した漁師の若者の法要を営む。若者は盛綱に祟りを及ぼそうとするが、盛綱の供養に満足し、やがて成仏するという後段からなるもの。

 殺した相手の供養に満足するということは考えにくいが、盛綱は後に鎌倉幕府の中枢で活躍した。

 公演の題目は、室町時代に世阿弥によって書かれた謡曲の裏には、あきらめざるを得ない庶民の慟哭があったということだろうか。

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