2021年1月20日水曜日

【蹴裂(けさき)伝説と国づくり】上田篤・田中充子 共著 鹿島出版会2011年3月10日第1刷

 日本が火山列島であることはそこに住む自分たちにとっては自明のことで、地形が時代によって変わったのも聞いたことがあると思う。

 なぜ地形が変わったのかということについては、自然の力であるとか人による掘削、干拓事業などの説明を聞いてきた。東京は海の底だったとか、横浜は幕末の開国以降埋め立てられて広がったとかといった具合であるが、自分は今の地形が当たり前として気に留めたことはなかった。

 しかし、自然災害を避けては通れず、利用できる土地が限られたこの国に暮らす身としてはなぜこの国がこの形になったのかを知っておくことは必要なのではないかと思う。その土地の成り立ちを知れば避けられる災害もあるからだ。


 本のタイトルとなっている「蹴裂伝説」は、神が障害となる地形を蹴り裂いて肥沃な大地を作り出したという言い伝えである。

その神とは狩猟を主として生活した先住民族に対する神であり自然現象であったり稲作を広げた民族のことを指すという。そのこと自体は国譲り神話などの研究を含めて一般に認められていると思うが、蹴裂に関しては、そもそもそういう地形ではなかったと認められないこともあるという。

蹴裂伝説についてフィールドワークを行った結果としてこの本では実際にあったこととではないかと語られている。

しかし、日本列島の成り立ちを知り、当時の地形を想像し蹴裂きの必要性を考えるとき、現代のわれわれの暮らしを見直すきっかけがあるように感じる。


0 件のコメント:

コメントを投稿