そうだとすれば人魚という非日常の生き物を物語の中心に据えた「赤いろうそくと人魚」もホラーに分類される可能性もある。
この物語がホラーでなく童話として分類されるのは今の社会に生きる教訓を含んでいるからだろう。
人間社会にあこがれた人魚が娘をろうそく店の夫婦に託す。
娘は人魚だが、とても美しく育ち評判となる。しかし夫婦は娘を大切に守って人と会わせることを避ける。
娘は夫婦の生活を助けたいと、その町の山の上にある神社に奉納するろうそくに絵付けをする。
そのろうそくは美しいだけでなく、ろうそくを灯した船は、神社の霊力で沈まないという評判が立ち、飛ぶように売れ、神社も町も栄えて、娘は休む間もなく絵付けをすることになる。
裕福になった夫婦は、人魚は不幸を招くという見世物小屋の男の口車に乗って娘を売ってしまうが、その晩娘を乗せた船は嵐に遭って沈んでしまう。
それ以降、そのろうそくを灯した船は沈むと評判が立ち、夫婦のろうそく店やお神社も町も見る影もなく寂れてしまう。
夫婦が娘を愛する気持ちを失い金儲けの手段としたことで、町全体が栄え、壊滅的に寂れて行くというのは、町の人たちにとっては不条理な事だろう。しかしそれは一種の連帯責任ではあると捉えることもできる。
自分の行為が関係ない人にも迷惑をかけるかもしれないから慎みなさいという戒め。
そういう気持ちが無い世界であれば、この童話の結末は理解できないホラーになる。
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