2019年1月12日土曜日

在宅終末医療についての2冊の小説

「サイレント・ブレス 看取りのカルテ」(南杏子著 平成30年7月10日幻冬舎文庫)
「告知」(「いつか、あなたも」改題)(久坂部羊著 平成30年10月10日幻冬舎文庫)
 どちらも在宅終末医療についての連作短編集で、どちらも著者は医師。
 終末医療はヘビーなもので、元気に社会に復帰する見込みがない。

 「告知」の最後に収められている「セカンド・ベスト」の最後に語り手の看護師に言わせている
「やめるか、心を医師にする以外ない仕事。それでも、医療を待っている患者さんたちがいる。彼らを見捨てるわけにはいかない。~中略~うまくいかないことがあっても、苦しみと悲惨に心が折れそうになっても、目を逸らさず、精いっぱいのことをしなければならない。
現実は止まらないのだから。」
 これは、まさにそういう家族を抱えているものの期待そのものだ。

 一方、「サイレント・ブレス」の方は、心ならずも大学病院から在宅医療診療所に派遣された女性医師が、大学で講座を持つ内示を断って診療所に居続けることを選ぶ結末。
 家族からすれば、それはそれで心強い。

 「告知」は実際のモデルがあるという分リアルで、同じような家族を持つ者がハッとする部分もあり、「サイレント・ブレス」はエンタテインメントに寄っていて少し気楽に読めるかもしれない。
 著者が医師としても小説家としても経験豊富なベテラン男性と、それより若い女性医師の初めての作品という事も影響しているのかもしれない。
 もちろん、キャリアの違いではなくパーソナリティの違いはあるだろうけど、同じフィールドで同じ時代に書かれた二つの連作短編集。
 比べて読んでみるというのも面白い。

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