2016年2月8日月曜日

【シネマの極道 映画プロデューサー一代】日下部五郎 著 新潮文庫 平成27年11月1日発行

平成23年12月に発行された本の文庫化。
著者は「仁義なき戦い」「極道の妻たち」など多くのヒット作を手がけた往年の東映の名プロデューサー。
その著者が東映に入社し、プロデューサーとして成功し、年をとり現在の映画の状況を憂いている事まで様々なエピソードを交えて描かれている。
映画関係者の話は面白おかしく誇張して聴かせるのが礼儀という事があるけど、この本に登場する脚本家の笠原和夫さんの本で読んだ原稿を取りに来て原稿のを待つ間布団で寝ていた大卒新人の会社の人間の話が寝ていた当事者のサイドから描かれていたのは、ああ満更誇張でもなかったんだなと。
邦画関係の本を読むと、書く人の立ち位置によって映画各社の書き方が違ってくるもので、資料として読むのであれば何冊か較べて読むべきだ。同じ話が別の角度から語られているのを見つけると、ああ実際にあった話なんだなとようやく信用する。昔の映画の世界は、裏方からしてそういう世界を作っていたんだと思う。
映画製作がそういう時代だった頃のお話…というのはさびしいな。作品の出口が多様化している現在、新し形で面白いものが出来る可能性はある。その可能性を作る事が出来るプロデューサーは、きっと出てくると思う。今はまだ旧来の作り方から脱却できていないけれど、ひょっとしたらもう出てきている可能性だってあるだろうな。食うためには新しいものを見つけて育てていかなければならないんだし。

著者もそうだったように、映画にはその苦労を厭わない、人を惹きつける魔力があるようだ。

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