2016年2月2日火曜日

【天才】 石原慎太郎 著 幻冬舎 2016年1月20日第1刷発行 2016年1月30日第2刷発行

元内閣総理大臣の田中角栄氏が一人称で語る形で書かれた小説。
実際の出来事とシンクロしてはいるけど何しろ本人が書いたものではないから。
その物語を子供の頃から亡くなるまでを全200ページで書きあげている。
内容は、非常に肯定的で、自分の失墜を“アメリカの虎の尾を踏んだ”せいだと書いている。
確かにその通りなのかもしれないし、日本の司法制度を逸脱した裁判であった事も事実。連日のスキャンダラスな報道に、その事を見過ごしてしまっていたという反省もある。
その問題点は、現在の出来事においても気をつけなければならないと思う。
実際に金権体質であったが、その成し遂げたモノは日本の背骨になっているというのも事実だ。
田中角栄という天才が民主主義という体制を金で動かして作り上げた国の骨格。

著者は、自民党の国会議員であった事があり、当時は反田中の立場であった事は、この物語の中や後書きにも描かれている。その著者がなぜこの本を書いたのか。
後書きに政界引退直後に早稲田大学の森元孝教授に「実は田中角栄氏が好きだったのではないか」と尋ねられたというエピソードが書かれている。

本来、官僚は与えられたものをこなす役割で、どのような国を作るのかは選挙によって選ばれた政治家の仕事。東京都知事を務めた後の著者は田中氏の立場を痛いほど感じたのかもしれない。
確かに政治家としての田中角栄氏の実績は群を抜くもので、日本の今の姿は彼の描いたモノに近いと感じる。
ロッキード事件が無ければ、日中、日韓関係は随分変わったモノになっていただろうし、ロシアについても同じ。
ただ、それが一人の天才によってなされるものであれば長続きはしないのだという事は、昨今の状況を見て感じる。

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