2015年12月22日火曜日

【空飛ぶ馬】 北村薫 著 創元推理文庫 1994年4月1日初版

久しぶりに読み返している。
人の死なないミステリー。
覆面作家としてデビューした北村薫さんの”円紫さんとわたし”シリーズ最初の作品。
ああ、こういうのいいなと思った。
日常の中のちょっとした謎を解いていく。
大学のOBで恩師の大学教授の教え子で、今は落語の真打ちになっている円紫さんと、そのファンである国文科の女子大生であるわたしが大学の対談の企画をきっかけに知り合い、老教授の子供の頃の織部に関する不思議な体験を時間を超えて解く「織部の霊」。
この一件で知り合った二人。
わたしは、日常に起こった不思議な、ちょっと引っかかる話を円紫さんに話し、円紫さんはそれを解いていく。時に遙か昔の出来事を、時に今起きている不思議な現象を、わたしの話しを元にロジカルに、または証拠を手に入れて。

悲しい出来事は起こるけど、凄惨な事件は起こらない。
そして、それはわたしの大人になっていく時間をも描いているのだ。

驚くことにこの本、置いている書店があんまりないし、近所の図書館にもなかった。
日本のミステリー小説の一つの到達点だと思っているんだけどな。
とってももったいない。

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