2011年6月19日日曜日

【軽蔑】監督:廣木隆一 2011年 製作:角川映画・ステューディオスリー

中上健次の原作を廣木隆一監督でやるって、どろどろの2乗だ。
しかし主演が高良健吾と鈴木杏。どこまで覚悟を持って出来るのかがポイントかななんて思いながら観に行った。

鈴木杏は、女優として生きていくんだという強い決意を感じた。
だけど、残念なことに構成がついて行っていない。
役者が覚悟を見せているのに、本当に残念なことだ。
元の脚本がどうだったのか分からないけど、見せ方の切れ味がない。
脚本の奥寺佐渡子さん、【八日目の蝉】はよかったんだけどなぁ。

二人が東新宿を逃げて走るシーンとか、顔におもいっきりフォーカスして背景を白くとばすなんて凝った画を作ったりはしてるんだけど、ストーリーの切れっていうのはカメラワークじゃカバーできないもん。

組の金600万円を野球賭博でスったカズ(高良健吾)が真知子(鈴木杏)の働くバーを襲撃してチャラにしてもらうという、カズのキャラクターを強烈に印象つけなければならないシーン。
意外とさらりと流している。
いきなりそれだからなぁ。

エンディング近く、カズが、真知子をだまして一人電車に乗せ、地元のやくざと決着をつけに事務所に乗り込むシーン。
資産家の息子である自分とポール・ダンサーである真知子の関係を周りに納得させるには、自分は人殺しという罪を背負うというって事もあったんじゃないだろうか。
なんか、掘り下げ方が親切じゃないというか…。
組事務所で腹を刺され、一人シャッターの閉まった商店街をのたうって歩くカズ。
タクシーの後部座席で、戻ってきた真知子の膝の上でって、イメージシーンにしても無理がある。
タクシーは血だらけの人を乗せないし、乗せたとしたら病院に向かって飛ばすでしょ。
どこにも行き着けない二人って表現なら、もう少し何か考えるべき。
男と女は五分と五分というより、男と女は二人で一つって終わり方。
それはそれで有りだけど、中上健次の世界的にはどうなのかという事。

役者も頑張ってるし、歌舞伎町の撮影とか、製作の人も頑張ってると思うんだけど、なんだか報われない映画になっちゃったなぁっていうのが自分の感想。
性描写に関してはRー18指定止むなし。昔あったロマンポルノのエロス大作レベルかも。
監督は、ロマンポルノを取っていた人だし、ロマンポルノがまだあったら、そこで企画制作されていたかもしれないね。

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