2021年11月23日火曜日

【サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~】原題:Sound of Metal 監督・脚本:ダリウス・マーダー 2019年製作/120分/アメリカ映画 配給:カルチャヴィル

 主人公ルーベンがバンドのドラマーでタイトルがサウンド・オブ・メタルと聞けば、ヘビメタ系の音楽の映画かなと思ってしまいますが、そうではありません。音楽のジャンルとしてはヘビメタではなくハードコアパンクですね。と言っても、演奏シーンで彼らの音楽が流れるのは冒頭のみですが。


突然耳が聞こえなくなったらどうするか。

ミュージシャンなら、これまでのキャリアをすべて絶たれることになりますから絶望を感じるでしょうし、そうでなくても日常が根底から変わる恐ろしさで冷静でいることは出来ないでしょう。

この映画は疑似的にルーベンが聞いたであろう音を作り出しています。

とても聞き取れない音、不快で不安な音。

それでもルーベンは一緒にツアーを回っていた恋人ルーと元の暮らしを取り戻そうと自暴自棄になりません。それを違和感なく見せる脚本とルーベンを演じるリズ・アーメットの演技は確かなもの。

自分が印象的だったのが、障害を受け入れるためにルーに説得され、入った聴覚障害者のコミュニティーで、馴染めないルーベンは、一人の少年と金属製の滑り台を叩いてコミュニケーションをとったことがきっかけで溶け込んでいくところ。ものを叩くのは強い振動で、耳が聞こえなくても体で感じることが出来る。

ドラマーであったルーベンには自明のことだったはずで、改めてそのことに気が付き、希望を持ったことだったのではないでしょうか。

手術をし、コミュニティーを出てルーと再会し、ルーの心境の変化を感じ取るくらい冷静なルーベン。ルーの心境の変化を、一緒に暮らしていたルーベンだから気が付くしぐさで表現するアイディアも気が利いています。

ある意味、全てを失ったともいえるルーベンですが、意外と明るく受け取るレビューもあるとおり、絶望で終わらせない演技も良かったと思います。

しかし、この映画はスクリーンで見ないと音の感じ分かりにくいだろうな…


Amazon Prime Videoで2020年12月4日から配信。第93回アカデミー賞で作品、主演男優、助演男優、脚本、編集、音響など6部門にノミネートされ、編集賞と音響賞の2部門を受賞した作品です。


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