著者は日本で生まれ、音楽好きが高じてアルバイトと渡英を繰り返して現在はイギリスで保育士をしているとう方。Yahoo!ニュース|本屋大賞2019ノンフィクション本大賞受賞作品で息子の体験や感じたこと描いた「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」をとても興味深く読みました。(その息子に自分が言った言葉を本のタイトルにして…と突っ込まれたとか)
さて、この作品は20年ぶりに日本に長期滞在し取材をしてイギリスと日本の違いを人権や格差という視点からルポルタージュ。
人権は英国では誰もが生まれながらに持っているもので、子供でも主張するのが当たり前。日本では権利を主張する前に義務を果たせと言われ、自立しなければ主張してはいけない義務とセットで捉える人が多いと語られています。
“はじめに”で著者は日本でも存在しながら目を背けられていた貧困層の生活の体験について語ります。一億総中流と言われバブルに沸いた時代に貧困家庭に生まれ育ち、定期代を稼ぐためにアルバイトをすれば、先生から「そんな家庭があるわけがない」と否定される。
著者のプロフィールには音楽好きが高じてアルバイトと渡英を繰り返し’96年から英ブライトン在住とありますが、そんな世界がThe Blue Heartsの「TRAIN TRAIN」の歌詞“弱い者たちが夕暮れ、さらに弱いものを叩く”を体感していたのかもしれません。
そんな経験をした著者はイギリスで保育士の資格を取る中で身に着けた人権意識の目で日本を見ます。
イギリスでは階級意識が高く社会が分断しているのですが、一方それがゆえに労働者階級にお金がないという事は恥ずかしいことではなく、お金がないと高らかに言える。「貴様らがしっかりやってくれないから、末端は苦しいのだ」と政府に拳を上げる。
今や問題から目をそらし続けてこじらせた日本と、旧態然とした階級闘争を繰り広げるイギリス。どちらがいい悪いではなく、こちらがこうで、あちらはこう…という区別。
その比較論という事になると思います。
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