昔、日本には純文学というジャンルがあって・・・って書くと、今の作家の人々に失礼だろうか。
しかし、ここまで特殊な日常の物語を、突き詰めて書き、読ませる作家って、あんまりいない気がする。
中上健次と言えば、路地の文学という独自のフィールドを持ち、その完成された世界で、世の中に認められた人という認識を持っている。
この枯木灘の世界は、人間まじめにやっても報われるか分らん。苦労して、悲しい事がって生きていて、それに耐えたとしても、その先にあるのは、やはり同じような苦労と悲しみだけかもしれない。
でも、人はそうやって生きて行くという事を、路地の濃く、ややこしい血縁の中で精緻な筆致で描いている。
しかし、読んだ当時は単にややこしく重い話という感想だった気がするけど、いま読み返せば、よくここまで描けたなと。
文章って、自分の素が出ちゃう事があって、小説の場合だってフィクションと断ったって、どこかに自分がいるってのが恥ずかしいと思うんだけど、これは突き抜けている。
小説は、主人公に感情移入してしまいがちだけど、作家はいろんな所に目を配って書くものだしっていうのを再認識させられた。
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