2015年4月3日金曜日

【人間の土地】 サン=テクジュペリ(堀口大學 訳) 新潮社文庫 昭和30年4月10日発行 昭和62年2月10日第44刷

航空パイロットによる航空機事故のニュースに接すると、いつもサン=テクジュペリの「人間の土地」が頭をよぎる。
エンジンの信頼性はとても低く、航空に使われている通信や位置測定や制御や、そう言ったあらゆる機器が未開発の時代、航路を切り開いて行った時代のパイロットの話。
その頃のパイロットは、まさに命懸けで、地形図による航路の他にも、地上の目印となる木や牧草地、不時着せざるを得なくなった際に気をつけなければならない罠のような小川なんかをベテランパイロットに教えてもらって飛んでいた。
自分の位置を見失い、空港の灯だと思って目指していた光が水平線の上の星で、大西洋の上で、どれだけ無駄にしたか分らない燃料が尽きつつある中で必死に陸地を目指す。
あらゆる努力の末、夜に隠れてしまったパイロットたち。

そのストレスと、成し遂げた際の達成感・解放感はぼくの想像を超える。
今のパイロットは、多くの危機の助けを得て、飛ぶ事自体は当時と比べて簡単な作業なんだろう。
しかし、乗客の数。預っている人の命の数は桁違いだ。
責任の重さは量れるものではないのだ。

少しでも自らの適性に疑問を持ったパイロットは、自らが預かった命の価値や可能性に思い至って欲しい。先人がどういう経験をして航路を切り開いてきたのか、どんな思いで飛んでいたのかを想像して欲しい。

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