柔道は中学校時代の必修科目でやったことがある。
その歴史や成り立ちなんて考えたことが無くって、まあああいうものだろうという感覚しかなかった。
この本で描かれる七帝柔道とは、そうしたスポーツ化した講道館柔道ではなく、一本勝ちのみ認められる戦前の高専柔道の流れを汲む旧帝国大学七校で行われている柔道。
旧帝大と言えば、それぞれ地域の名門で、柔道のような格闘技のイメージはない。
まして世界の主流から離れた一本勝ちのみの肉体を酷使し、精神をすり減らすルール。
一般に報じられることもなく、柔道紙にも取り上げられない。
普通に考えれば、ばかばかしいと切り捨ててしまいそうな柔道を、留年してまで行っているのはなぜか。
かつては七帝戦を連覇した歴史を持つが、現在は連続して最下位に甘んじている北大柔道部に所属する主人公。
それを筆者本人の経験を踏まえて、主人公が2年目の七帝戦を終えるまでの物語。
そこで得られるものは、生き方だ。
確かにそう思う。
人の生き方は、自由であれば楽な方に流れていくだろう。そこにいろいろな枷が填められるのが社会で、それをどう捉えていくかという修練をする。
学校生活というのはそんな場だと思うし、縦の関係が重視される部活動は、そういう面が一層強い。
やっている本人たちがどう意識しているにせよ。
僅か1年と少しで主人公たちは、苦しい七帝柔道の中でそれに気づいて行く。
ここでは簡単にそう書くけど、本書の書き方は濃密だ。
だから、確かに部活動は苦しいけど、そこから逃げないことで得られるものは多いというのは理解できる。
そういうことを雄弁に語っていて、胸が熱くなる。
しかし、そこには限度もあるし、残念ながらここに出てくる先輩たちのように真っ直ぐな人たちだけではない。
そういう現実もあるということも忘れてはいけない。
残念なことだけど。
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