2013年12月31日火曜日

【そして日本経済が世界の希望になる】 ポール・クルーグマン 著 監修・解説者 山形浩生 訳者 大野和彦 2013年10月2日第1版第1刷 PHP研究所

巻末には、この著作は訳者の大野和彦氏によるクルーグマン博士へのロングインタビュー、その後のEメールなどでの質疑応答を通じ、日本のみの発売を企図されたものである事が記されている。

本文中にも言及されているようにクルーグマン博士はアベノミクスの行方を非常に注視している。
それは、自らの主張を実行しているから。
ポール・クルーグマンといえば、一般的には2008年にノーベル経済学賞を受賞したことで知られているけど、その経済理論はとてもわかりやすく、個人的に日本で多く知られるようになる切っ掛けとなったと思う山形浩生氏の砕けた訳文は、経済学を学ぶ人にはお勧め。

彼の立場は、いわゆるケインジアン。もう何年も台頭しているメインストリームの新自由主義の経済学者とは相容れない。しかしニューヨークタイムズ紙にコラムを持ち、マーケットにも影響力を持つと言われる経済学者。
その政策がおひざ元のアメリカではなく日本で取り入れられるのは、やはり新自由主義の影響の強い世界と、新自由主義とのバランスを取ろうという日本の立場の違いなんどろう。
市場経済は万能ではないが、公共セクターによる適切な介入により成長を継続できる。
プライマリーバランスなんて、好況時に考えればいい事で、日本が今考える事ではない。
デフレ脱却には政府と中央銀行が一体となったインフレ期待継続が重要。中央銀行の独立性なんて意味ない。
その立場から日本の財政健全化政策、消費税増税には批判的。

自分的には、今のデフレは技術革新と経済のグローバル化による世界的な価格均衡の大きな流れの中の現象じゃないかと考えている。
だから消費を刺激すると言っても、革新的な消費するに足りる物が出てこない限り簡単には行かないぞと思うし、政府が賃金引き上げを叫んでもそういった事情で収益が上がらない企業には無理という話ではないかと。

この著作は、過去の著作の内容と被る部分が多いけど、ちょっと興味あるなと言う人は読んでみたらどうだろう。

新書版で手ごろな厚みだし。

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