2011年2月19日土曜日

【バガージマヌパナス】池上永一 著 1994年12月 新潮社

第6回ファンタジーノベル大賞受賞作。同時受賞で、映画化された「鉄塔武蔵野線」(銀林みのる著)がある。
この本の中に挟んである選評(この頃は、選評が別の冊子になって挟まっていた。)で、荒俣宏さんが、「この賞があと10年つづけば、日本の主だった小説家はファンタジーノベル大賞出身という事になりそうな気がする。」って書いていたけど、その期待に違わず、素晴らしい作家を輩出している。(最近は、趣向が変わった気がして読まなくなったけど。)

池上永一さんといえば、「テンペスト」が今年舞台化されている注目されている作家。
しばらく前に沖縄を舞台にした映画が流行った時期があったけど、この「バガージマヌパナス」とか、きっちり映画化したらいいのにねと思っていた事がある。
でも、造り手側は、「しっかりとした芯がありすぎて、自分の色が出しにくくて、造り手としての面白みがない。知名度があれば良いけど、そんな企画苦労して通したくない。」とか言いそう。
その位物語のテーマがちゃんとしていて、涙や笑いもふんだんにちりばめられている。

先祖を祀る意味や人間の生と死を、沖縄の風俗を絡めて軽妙にしっかり書いていると思う。
未読の方、とりあえず読んでみる事をお勧めします。

1 件のコメント:

  1. 個人的には、ヒロイン綾乃が神様に、なぜ拝みが必要なのかを見せられるシーン。その解釈に共感した。
    亡くなった人は、生きている人の思いの中で生きているわけで、忘れ去られたら、その存在が無くなる。
    亡くなった人たちを覚えているために祈るのだ。

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