2011年2月13日日曜日

【1973年のピンボール】村上春樹 著 1980年 講談社

読むと、初めて読んでいた当時の事を思い出す小説がある。

大した人生を送ってきていないにしても、それなりにアクセントみたいなものはあるわけだし。
一方、すっかり馴染んでしまって、初めて読んだの、何時だっけって当時の自分自身を思い出せない小説や、そもそも覚えていない小説もある。
先週、『風の歌を聴け』を読んで、無性に残りの2作品を読みたくなって文庫本を買ってきた。順番に読もう。

村上春樹を初めて読んだのは、実は『羊をめぐる冒険』からで、『1973年のピンボール』、『風の歌を聞け』の順番だったなんて事を思い出したし、自分は、何だかあの頃とちっとも進歩していないなぁなんて、漠然と思っていた事をはっきりと気がついたりした。
バーで飲む酒の量が、昔より随分増えたくらいか。(昔は主人公くらいの感じだった。)
時間をおいての読書というものは、ただ、その本に書かれている事だけ感じるというものではない。
何だか鈍い痛みを感じてしまう。

1969年から1973年にかけての物語。
その時代の空気感って知識としてしかわからないけど、この本に描かれているのは、そういう空気を踏まえながら一応ファンタジーのジャンルに入るのかなって思ってしまう。当時は、そんな読み方はしていなかったと思うけど。
単純に、ピンボールマシンに向かいながら、大学生になったらどうしようなんて考えていた気がする。
大学に入って、夏休みに帰省するってどんな感じだろう、とか。
昼間、久しぶりにゲームセンターへ入ってみたら、ピンボール・マシンなんて1台も見当たらなくなっていた。
みんな東京の奥地の、昔養鶏場だった倉庫に押し込められてしまっているのか。
いや、もうそんな人たちも死に絶えてしまったかもしれない。
自分はもう、それくらい遠い所に来てしまった気がする。

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