2010年12月30日木曜日

【ウスケ ボーイズ 日本ワインの革命児たち】河合香織 著 2010年11月20日 小学館

第16回小学館ノンフィクション大賞受賞作。

この賞の受賞作で過去、読んだ事があるのは、第1回「狂気の左サイドバック 日の丸サッカーはなぜ敗れたか」一志治夫 著 1994年、第4回「絶対音感」最相葉月 著 1998年。
前者は当時の日本代表の不動の左サイドバック都並敏史のドーハまでの物語。後者は、音楽における絶対音感についてのいろんな音楽家を取材したドキュメントだった気がする。(両方とも、多分家の書棚のどこかにあると思うんだけど…。)
一志治夫さんについては、その前の「たった一度のポールポジション」(1989年講談社)という高橋徹というレーサーの生と死を扱ったドキュメントに衝撃を受けた記憶がある。

ウスケボーイズとは、日本ワイン界の巨星(って言っていいんでしょう)麻井宇介氏の薫陶を受けたワイン農家(醸造家)の3人の事。
その御三方のワインづくりに携わるきっかけと今に至るまでの物語、ワイン造りの思想について取材した本。
この人たちをクローズアップしたいのは分かるけど、彼らが大学時代にワイン友の会をやっていた1994年には、すでに国内でも生食用ではないワイン用のブドウからワインを作るという事はやられていたし、3人のように個人の思いから事業化もされている。その事実をちゃんと書いていない(国産ブドウの比率という形では示されているけど)のはフェアでないと思う。当然そこから何か思う所があったはずだし。

宇介って、うすけ~ウスケ=ウイスキーの事かな。ネットで検索してみると、
『日本のウイスキーの父は、サントリーの創業者・鳥井信治郎。1923年、山崎蒸溜所が誕生し、大麦が運び込まれ、キルンからピートの煙がたなびき始めました。蒸溜されたウイスキーは樽に詰められ、貯蔵所へ。1年、2年、3年…製品らしきものが何ひとつ出て来ない工場を村人たちは怪しみ、「麦を喰うウスケという化け物が棲んどるそうな」と噂したそうです。 』とか。
御本名は浅井昭吾さん。メルシャンでウイスキー、ワイン醸造を手掛けアルゼンチンに出向いて醸造を教えた事でも知られ、日本のワインに革命を起こしたとされる「シャトー・メルシャン桔梗ヶ原メルロー」を手掛け、晩年はワインコンサルタントして知られた人。(ふ~ぅ。長い略歴だけどすごい人だ)この本で、がんで余命いくばくもない麻井さんを励ます会で、3人が禁酒を医者から言われている麻井さんに自分たちがそれぞれ作った3種類のワインを飲んでもらうっていう話が紹介されているけど、麻井さんはホント日本のワイン造りに対する思いが強い人だったんだなと。麻井さんには命をかけて伝えたいものがあり、この3人はそれを託されたというお話。

自分も以前は酒屋の店頭にある大概の国産ワインについて肯定的な感想はあまりなかったんだけど、カーヴ・ドッチや高畠ワイナリーとかをはじめとする国産ワイナリーのワインに接して、よい所を探して飲む事を覚えた気がする。
(そこのワインが劣っているって訳では全くありません。)
一時、ワイナリーやりたいって思っていた時期があったんだけど、この本を読んで、自分は甘いなって思い知った。覚悟が違い過ぎる。
でも、同時に未だすごく憧れる気持ちもある。
この本にも少し登場するカーヴ・ドッチの落さんが、自身の著書の中で語っているように、ワイナリー作りは年を取ってからじゃ体力的に難しいってのを、この本で再認識した。

でも、ホント、羨ましいな。そんな生き方。

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